企業の資金調達方法の一つとして、ライツ・オファリング(新株予約権無償割当)というものがある。

権利付き最終日までにライツの実施を発表している銘柄を所有していれば新株予約権がもらえ、さらに新株予約権は期間限定で上場するため、そこで取引することも可能。

正直ライツの制度についての知識はちょっとググったくらいなので全く詳しくはないのだけれど、今回はデイトレの観点から、ライツ銘柄権利落ち日当日の取引についての話をしようと思う。

謎の下落で初めて気づいたライツ銘柄権利落ち日の仕様

自分が初めてライツ・オファリングについて知ったのは恥ずかしながらつい最近の話。

2023年7月25日、ポエックが大幅に下落した寄り付いた。

まず、前日の終値が1448円なのにも関わらず、寄付きが974円から始まっていることに驚愕。

「なんでストップ安の下限を貫通しているのだろう…」と疑問。本来なら、どんなに下落しても1148円のストップ安が底のはずだ。

しかもその日は寄りから買われて、結局ストップ高で張り付き取引が終了。もうわけがわからなかった。

ただ、この謎のギャップダウンはライツ銘柄の権利落ち日の仕様であり、バグでもなんでもない。

ライツ銘柄の権利落ち日当日の基準値は以下のように計算される。

(前日終値 + 新株の値段)÷ 2

要は、オリジナルの株価(前日終値)と新株の値段を平均化した値段が基準値に設定される。

ポエックの場合は、

(1448円 + 500円)÷ 2 = 974円

よって、ポエックの基準値は974円となり、特買いや特売りにはならずにすぐ寄り付いたため始値も974円となった。

権利落ち日は買いのチャンスなのか?

上記でも述べたように、権利落ち日当日はオリジナルの株価と新株の株価を平均化した基準値が適応される。

大きく下落した状態で始まるため、マネーゲームとしてデイトレーダーの標的にもなりやすい。

権利落ち日当日は新株がまだ出回っていないのも大きい。市場の発行株式数は同じなのにも関わらず株価がバーゲンセール状態になるため、需給の面でもチャンスととらえられるのかもしれない。

実際、2023年にライツ・オファリングを実施したポエックやテスホールディングスは、権利落ち日当日にストップ高を記録している。

2020年にライツを行ったクシムに関しても、権利落ち日当日はストップ高手前まで株価上昇した。

ライツ発表後から権利落ち日当日までの株価の動向に注目

ただ、すべてのライツ銘柄が権利落ち日に上昇するとは限らない。

2023年にライツを実施した地域新聞社に関していえば、寄りから株価が大きく上がることはなかった。

地域新聞社の場合、新株のディスカウント率があまり高くなかったこともあり(新株の値段がオリジナルの株価と大きな差がなかった)、権利落ち日の基準値も前日終値と比較してもインパクトある下落には繋がらなかった。

また、ライツ発表後からの株価の推移にも注目したい。

ライツ・オファリングが発表されると、株価の希薄化を警戒されて株価は下落するのがセオリーらしいが、ポエックやテスホールディングスに関してはそこまで大きな売りが出ることなく株価は推移していった。

オリジナルの株価が垂れることなく権利付き最終日を迎えることができれば、その翌日である権利落ち日のギャップダウン率が大きくなるため、市場へのインパクトは大きくなりやすい。ポエックやテスホールディングスが注目を集めた理由はここにあるのかもしれない。

今後のライツ銘柄がどのような動きになるのか不明だけれど、権利落ち日当日は寄りから注視していこうと思う。